いろいろと、お別れの予感

終点の増毛駅は昔来た時と駅舎が変わっているが雰囲気は変わっていない。大勢の鉄が当然ながら終点まで乗り越しており、折り返しの列車の座席争奪戦が激しくなるだろうと身構えていたのだが、あにはからんや鉄どもは降りたら思い思いに散開して争奪戦は起こらなかったので、余裕でベストポジションを確保。すなわち海側で窓割のあった座席をゲットである。これで帰りはより一層堪能できる。
出発まで40分もあるので写真を撮ったり駅前をウロウロしたりしたが、残念ながら駅前に商店などは無し。駅舎は無人化しており駅員はいないが、近くの水産加工会社がお土産物を売る売店がある。ところが、商品はすべて海産物で要冷蔵!水産加工会社だから当たり前だが、これでは車内で食べるわけにはいかない。
今日は朝食も食っておらず、旅に出てから飯食うチャンスがなくて飲み物を一本深川駅ホームで買っただけである。しかし鉄をしていると不思議と腹が減らない。飲み物も飲まないのでトイレに行く必要もない。ひたすら鉄に集中できるわけである。
行きの増毛行きはまだ昼間で空は明るかったが、帰りの深川行きは15時台の出発なのにもう空は夕方の風情。つまり、昼の明るい景色と夕方の薄暗い景色の両方が堪能出来て、一粒で二度おいしい。全開にした窓から吹き込む風が冷たいが、そこは我慢だ。この素晴らしいひと時を少しでも無駄にはしない。
ところで増毛を出発して三つ目の駅、舎熊(しゃぐま)からあの鉄カップルが乗ってきた。さっき箸別で降りた二人だ。箸別から舎熊まで二駅分を歩いて移動したようだが、道路は国道を歩けばいいとはいえ、沿線には何もなく片側は海という過酷さ。そしてこの二人は次の駅・信砂(のぶしゃ)で降りて行った。まったく、よくやるわとしか言いようがない。
散々堪能しつくして、しかし留萌に列車が着くと言いようのない寂しさに襲われる。おそらく、私がこの線に乗ることはもうない。廃線はいつでも悲しいものだ。…と、ぼーっとしていたら、留萌で5分停車だと知った。出遅れた!慌てて食べ物を買いにホームに降りたら、廃線記念硬券入場券セットと乗車券セットを発売していることを確認。それは買わねば!!
とさらに慌てて改札口を抜けて切符売り場に行くと、先に鉄が3人並んでいる。うち2人のガキ鉄は時間が無いのを知ってか知らずかのんびりしている。しかも駅員の方ものらりくらり。お前ら早くしろ!!
見かねた別の駅員が3人目の鉄に対応。私は、「早くしろ光線」をビビビッと駅員に照射!もうあと2分しかないぞ!!早く俺にキップを売れ!!!
…という私の圧力に敏感に反応したのは、駅員ではなく3人目の鉄。先にキップ買ってすみません、って感じでえらい恐縮していたので、私も光線の浴びせ先を間違えたと恐縮。笑って謝罪したつもりだったが、きっとその笑いは引きつっていたに違いない。
なんとかキップをゲットして列車に戻ったらすぐにドアが閉まった。ここから先は深川まで、まだ廃止対象ではない。しかし今のJR北海道の現状を鑑みるに、留萌と深川の間も多分アウトになるだろう。これがお別れ乗車になる可能性が高いので、しっかり味わっておこう。
なおこの列車は北秩父別駅に停車。北秩父別は大半の列車が通過するので貴重な停車列車だが、ここで降りる鉄がいた。さっきの信砂といい、鉄の行動は読み切れない。
深川から特急で札幌に戻る。今度の特急はベテランの785系だったが老いは感じられない。しかし785系ももうすぐ代替が始まるらしい。これもお別れ乗車になるかもしれない。
札幌で用を済ませ、私と別行動している嫁と大通で合流。ここからすすきのまでのほんの数百メートルを、わざわざ路面電車で移動。西四丁目からすすきのまでの約400メートルが開業して札幌市電の環状運転が始まったのは去年のこと。当然ながらここが未乗線となるので、今回ついでに乗りつぶしておいた。なおWikipediaによるとこの区間は「都心線」という名称だそうな。
都心線がほかの路面電車と違うのは、道路の両端に線路があること(サイドリザベーション方式というそうな)。歩道と極めて近いので、電車は超徐行運転でのろのろ走る。ま正直、歩いたほうが早い。現に我らが西四丁目電停で電車に乗ろうとしたとき、後ろから乗ってきたよそ者らしき若い女性が地元のオッサンにこれですすきのに行けるか尋ねたらしく、オッサンが「電車に乗るより歩いたほうが早い」と言って電車から降ろしていたくらいだ。
私のように乗り潰しが目的でない限り、この区間は金払って電車に乗るより歩いたほうが早い。でも鉄ヲタ的には他に類例のない線路でちょこっと楽しかった。
その後、嫁をラム肉のジンギスカンに連れて行った。マトンが苦手な嫁だが、ラムは大いに気に入った模様。よかったよかった。