ラスト?北斗星その1

18日は夕方になって風も収まり、列車の運行に支障はなさそうである。私は上野駅に18時20分ごろ着いた。寝台特急北斗星」の発車は19時3分なので、ずいぶん気合を入れたものだ。
地平ホームに降りると、既に北斗星の入線する13番線には人だかりができていた。その数30人と言ったところか。みなカメラを構えて入線してくるのを待っている。まだまだ先のことなのに、みな気合が入りすぎている。
北斗星」には食堂車が連結されているが、私は食堂に行く気はなかったので駅弁を二つ買った。しかも両方牛肉の弁当(^_^;) 理由は、私の乗車する車両が食堂から一番遠い1号車であることと、どうせ激込みで大変だろうからということと、去年の春に乗車した時食堂を利用したので、まあいいか、と思ったことである。単純に駅弁がうまそうに見えたからというのもあるか。
北斗星」は1号車を先頭に推進運転で入線してきた。長年おなじみの光景だが、これもやがて見られなくなる運命である。まあ「カシオペア」が残る限り、おそらく来春までは見られるだろうと思う。1号車はフツーのB寝台車。これが「北斗星」の最後の乗車になるかもしれないというのに、この期に及んでフツーのB寝台である。これは切符の入手方法によるもので、今回は阪急交通社のパックツアーを買ったのである。片道「北斗星」、片道飛行機でホテル一泊がついたシンプルなパック。寝台は開放B寝台しか選べず、購入後の乗変も不可能。そもそも私が持っている切符は正確には切符ではなく、乗車票である。
そして私の寝台は上段である。24系の上段寝台なんて乗るのいつ以来だ?しかも、上野から札幌までおよそ1100kmもの間上段寝台で過ごすのは、ちょっと記憶にない。「北斗星」は登場時から個室寝台車が連結されていたので、それを積極的に狙って乗車してきた。「北斗星」の開放Bは、乗ったことがあるような気がするが思い出せない。上野−札幌とほぼ同距離の東京−博多間だったら「あさかぜ」のB寝台で何度も乗っているが、「あさかぜ」も80年代後半から個室寝台車の連結が始まっており、個室登場後は個室を狙っていたので開放Bはおそらく中学・高校生の時まで。つまり1000km以上の長距離を開放B寝台で過ごすのは子供の時以来だ、と思ったわけである。なお下段寝台は去年「はまなす」で乗った(^_^;)
そして1号車に入って驚いた。簡易コンパートメントではないか。簡易コンパートメントはフツーのB寝台の区画に扉を付けて、扉を閉めると4人個室になるというもの。昔の「さくら」「みずほ」あたりに連結されていたような記憶があるが、まだ存在していたとは。「北斗星」にこれがついているのを知らないという時点で、少なくとも私はこの車両には乗ったことがない(^_^;) 多分きっと開放Bに乗ったこと自体ないのだろう。
北斗星」は始発からほぼ満席である。満席の開放Bなんて見るの何十年ぶりだか。乗っているのも鉄は少数派で多くは家族連れ、グループ、コンダクター付きのパックツアー(クラブツーリズムの旗持ってた)、まあほとんどが一見さん、つまりニワカである。荷物置き場を知らない老夫婦に、ここですと上段寝台脇の空間(側通路の頭上が荷物置き場)を教える。最近の旅行者は例のゴロゴロを引っ張っているので、荷物が大きすぎて寝台に置いて一緒に寝るのは不可能。知らないと一晩不幸である。
そんな風なので、車内は活気があるというが騒々しい。こんなにうるさい寝台車も子供のころ以来で、昔を思い出して妙に懐かしかったりした。最後かもしれない寝台特急で昔の思い出を追体験できるとは、これは幸せなことではないだろうか。
列車は定刻に上野を発車した。私は早速あるミッションを開始。遠いと敬遠していたはずの7号車食堂車まで必死こいて移動。既に何人も行列を作っていた。その列はシャワー室の予約の列である。廃止までにもう一回「北斗星」に乗れるチャンスがあったとしても、それは青森出張の帰りに函館から乗車するパターンになるだろう。その時は、食堂には行けてもシャワーは予約でいっぱいのはず。つまり寝台列車のシャワーを使う経験はおそらくこれが人生最後(「カシオペア」に乗る機会があったらまだチャンスはあるが)である。だからなんとしてもシャワーは確保する!…がしかし、私の番が回ってきたときにはもう後数人分しか空きがなかった。危なかった。みんな出発前から予約入れていたのか?出発後じゃないと予約取らないんじゃなかったのかなあ。シャワーセットを買うと、中に入っていたタオルに北斗星ヘッドマークが入っていた。これが欲しかった!一方シャワーカードは「カシオペア」のものを流用していた。これは残念至極。
その後そそくさと弁当を食した後、シャワーを浴び、上段寝台に上がりこんでとっとと横になった。といっても寝るのは勿体ない。今このひと時を堪能し尽くすのだ。などと考えていたら0時を過ぎてしまった。明日は早起きする予定なのでそろそろ寝ないとやばい。