さよなら江差線

木古内で白鳥を降り、とりあえず改札を出て途中下車。ここまでくると、次に行くのはあそこしかない。江差である。江差線木古内江差間は既に廃止が決まっており、来月5月11日が最終日である。この区間は1985年、2004年と2回乗っており、お別れ乗車するには遠すぎるのでもう来ないつもりだったが、今このタイミングでお別れ乗車する大チャンスに恵まれた。本当、青森のお客様には心底感謝である。
とは言ってもこの時間、既に日は傾き、木古内でも40分くらい待ち合わせがあり、おそらく江差に着くころには完全に日没。だがまあ、それもまたよし。このためだけに来たわけじゃないし、これ以上何を望むというのか。
廃止間際とは言え平日なので待合の客も少ない。しめしめ、これは快適な江差線の旅が出来そう。と思ったら、突然改札を出てくる鉄の群れ。慌てて時刻表を見ると江差からの列車が到着したところだった。まさかこの鉄どもが折り返したりしないだろうな?…というのは杞憂だった。鉄と言えども江差までもう一往復する暇人はいなかった。
私が乗る列車は函館発で、木古内には早めに着いて13分も停車する。それに合わせて到着前にホームに行き、列車入線を待ち構える。やがて函館側から列車が来たが…おやまあ、てっきり1両で来ると思ったら2両編成やで。廃止前で鉄が多いから2両とか?隣のホームにさっき江差から来た車両が1両止まりっぱなしになっているので、もしかしてこれも連結して3両になったりして。
…なんて妄想していたが、現実は逆だった。2両編成のうしろ1両はここ木古内で切り離し、1両のみで江差に向かう。出発の13分前からホームに降りてくる客はほとんどおらず、私の他には鉄が一匹のみ。フッフッフ、みんな修業が足りんね。おかげで思いのままの席を余裕で確保した。
ちょうどボックスに一人ないし二人くらい埋まる感じで乗客が増えたところで出発。鉄っぽいのも何人かいるので、鉄がいなければもっとガラガラだったのだろう。線路は木古内を出るとすぐに山越えになるので、山ばっか。途中の列車交換駅・湯ノ岱にはまだ駅員がいた。これだけ客が少なくて列車はワンマンなのに、この駅は最期まで有人駅で終わるのだな。
3時間に1本しか列車が無く、スピードもノロノロで全く現代の交通事情にマッチしていない江差線。貨物列車もとっくの昔に無くなっており、むしろよくここまで生き残った、というべきか。しかし乗客に車椅子を持参の二人組がいたのだが、てっきり鉄しに来てるのかと思ってたら、宮越という何もない駅で降りて行った。車椅子持参とは言え自力で歩いていたので歩行困難というほどでもなさそうだが、交通弱者とは言えるかもしれない。ごく少数かもしれないが、線路が廃止になったら困りそうな人がやっぱりちゃんといるではないか。来月以降いったいどうしてくれるんだろうか。
列車が進むにつれてどんどん日が陰っていく。ターゲットにした線路を夕暮れ時に乗ることはあまりなく、特に乗りたい線路は最優先でスケジュールして真昼間に乗ることが多い。ので、どんどん景色が見えなくなっていくというのは残念な気もするが、そもそも仕事のついでだし、この雰囲気もまた良し。
山を越えた江差線は終点一つ手前の上ノ国から日本海に面して走るのだが、もうほとんど日が落ちて95%くらい真っ暗。でもかろうじてそこに海があることはわかる(^_^;) 完全に日が落ちると海は漆黒になって全く何も見えなくなるが、その一歩手前の状態。
そして終点の江差に到着。あわよくばここで木古内からの特急券を買おうと思っていたが、既に無人。17時半で営業は終了だそうだ。しかも、今日18日から江差駅で乗客に何か配り始めたらしい(⇒「江差駅の『来駅証明書』が配布開始になりました。」)。配ってくれるのは結構だが駅員がいるうちに来ないと当然ながらもらえないというオチ。
江差駅待合には意外と多くの人が待っていて、帰りもボックスが埋まるくらいの客を乗せて出発。江差の滞在時間、約10分。でも満足。そして、この線路に乗ることはもう二度とない。外は真っ暗で何も見えなくなったが、最後の江差線の乗車をかみしめた。