カシオペア乗車記の続き

それにしてもカシオペアのA寝台2人個室は狭い。二人して大きな荷物を持ち込んだからかもしれないが、荷物置き場が思ったよりずっと狭かったのが誤算だった。もっともこの荷棚にトランクを置いてみると意外とすっぽり収まったのでそんなにワイワイ言うほどのことでもないかもしれないが、その上にお土産などを置くと嫁の荷物を置くスペースは無くなって床に置くことになった。
まあスペースのことは仕方がない。むしろこの狭さで寝台2人分にトイレや洗面台(折畳式)まで詰め込んでデザインするのは大変だっただろうなと思うところはいっぱいある。いたるところアイデアだらけで感心する。寝台は向い合せのソファーから自分で組み立ててセットしなければならないが、かつて583系の下段寝台を勝手に組み立てて遊んだ前科前歴から、同じような仕組みの寝台セットは実に簡単でお手の物である。
最も困ったことは、コンセントがトイレ内の洗面台横の一か所にしかないこと。これはひげそり用のコンセントだが、これでは二人分の携帯電話の充電やパソコン使用に支障をきたす。結局パソコンは電波のこともあるので使用しなかったが、充電だけはやらなきゃしょうがない。
カシオペア用寝台車E26系が登場したのは1999年であり、当時はコンセントがたくさん必要ではないと思ったのだろうが、それから既に13年も経っているので乗客のニーズも少し変わってきているのだろう。できればリニューアルしてコンセントを増やすなど現代にマッチした仕様に改めたいところだが、人気列車なのでそうする暇もないかもしれないし、費用対効果で見送られるかもしれない。
たしかにカシオペアは素晴らしい寝台列車だが、コンセプトはいにしえの寝台列車の延長線上にあり、昨今の滅亡寸前の寝台列車を救い、勢力を回復するほどのものではないように思えた。これが1999年の出たばっかりの頃に乗ったらひたすら素晴らしいと礼賛しただろうが…2012年の今となってはこれでもなお不十分だと思える。寝台列車回復のためには一層の革命的な車両が必要なのだろう…それがもしかしたら今JR九州が企画している「ななつ星」なのかもしれない。もっともアレは最低でも22万円もする高額なツアー専用列車だが。
カシオペアの一晩は良く眠れた。寝台車は初めての嫁も良く眠れたようだ。ちょっと遅く起きたため、のんびりしていたら食堂車の朝の営業が終わってしまった。もっとも朝食も1600円と高額なので行けなくてもそれほど残念ではない。
終点が近づくにつれて、このままずっと乗っていたいと思うようになった。これはまあ寝台列車に乗ったらいつもそう思うのだけれども、今回はこれが人生最後の寝台車になるかもしれないと思ったらより一層その気持ちが強くなった。もう寝台列車は数えるほどしか残ってない。私が老齢になるころには高額の「ななつ星」しか寝台が残ってないなんて状況になってそうな気がする。こんな列車旅がこれで最後かと思うと実に残念である。
しかしカシオペアは淡々と終点上野に到着。荷物をもってそそくさと降り…ようとしたら室内用のスリッパを履いたままだったので慌てて靴を履きに戻った。こうしてカシオペアの旅は終わった。