とでんワンダーライン

しかし私がまず乗車したのはJR四国である。高知を正午ごろに発車する窪川行き、1000形という気動車1両のみのワンマン列車である。1000形自体はもう何度か乗っているが、ボックスシートロングシートが互い違いになっている変なレイアウトの車両である。これに乗ってボックスシートを占拠しようとしたら、なんだかえらくボックスの数が少ない。よく見ると、オリジナルの1000形には無かったトイレが追設されていて、その分座席が減ったのだ。まあ、長距離列車にトイレ無しとかありえないのでトイレ追設は正しい判断だろう。
高知駅高架化に合わせて近距離にある入明と円行寺口も高架化。しかも両駅とも乗客が乗ってくる。沿線に建物は多く乗客は比較的多め。そしてこの列車を伊野で降りる。すれ違いで停車していた高知行きはキハ32の2両編成だったが、スゲーぼろぼろ。四国がJRになるころに作ったレールバスに準じた車両で一部部品は廃車流用という低コスト車両だった。今まで取り替えられずに使われているのが不思議なくらい。
さて…久しぶりに伊野に来たわけだが、この前がいつか思い出せないくらい前なので土電の駅がどこあるかわからん(^_^;) まあ、よく見ると駅前に線路があって伊野駅前という電停もあり、始発の伊野電停はそこから100mくらい歩いたところにあった。
しばし時間があるので周囲を散策すると、伊野電停から明後日の方向にのびる線路がある。しかし線路は駅とつながっておらず、ディズニーシーのイミテーションの線路みたいに道路に埋め込まれたようになっている。これをたどると、行った先には駐車場しかなかった。おそらくそこは以前は車庫だったのだろう。架線まで残っている本格的な廃線である。
伊野は始発なので、運転台の直後、というか真横に近いベストポジションに着席。前面展望をほしいままにした(^_^;) この土電…とさでん交通伊野線は伊野と高知市街を結んでいるわけだが、途中まで単線である。道路脇を単線で走るさまはまさにワンダー。楽しくて仕方がない。道端を走るため、沿線の家の真ん前を通り過ぎるデンジャラスなさまも良い。
JR朝倉駅前にあるその名も朝倉駅前電停で、ついに出ました!道路に描いてあるだけの安全地帯!全然安全じゃない。そこから先はしばらく細い道を電車が行く形になるが、車も避けて通るような細道のど真ん中に線で描いただけの安全地帯。しかも、朝倉電停は電車の行き違いを行うので道幅の4分の3くらい電車が使う。これは車も怖いよ。
伊野線の醍醐味のもう一つは、伊野からこの朝倉まで通票閉塞を行っていること。伊野から行くと途中の電停のないところに行き違いがあって(中山信号所)、対抗する電車がすでに停まっている。その電車と運転台が重なるように停車し、お互いの運転士が通票を交換。今や全国的に珍しいタブレット交換を目の前で見ることができる。
朝倉では同じように電車が止まるが、こっちの電車は通票を受け取らず相手に渡すだけ。朝倉から先は普通の閉塞方式で、橋を渡った鏡川橋からは複線になる。複線区間は広い道路の真ん中を走る。電停の安全地帯も、ちゃんと安全だ。
土電の電車は多くが釣り掛け式で、走るとブオーンという昔ながらの音がする。これも、ほとんど路面電車でしか聞けない音になった。電車の乗客は、全区間にわたってコンスタントに乗っており、沿線住民の足として立派に役目を果たしているのは良かった。