voyaki2006-03-02

前夜:「出雲」で出発

話は1日夜にさかのぼる。幸いにも仕事を早々に切り上げる事が出来、いったん帰宅して準備して東京駅に参上。今月で廃止になる予定の寝台特急「出雲」の周囲には鉄道マニアどもが大量発生していた。まあ、それは予想の範囲内ではあるが。不運にも雨が降っており気温も低い。それでもマニアどもは元気ハツラツ。ホームを右往左往しながらスチルカメラで、ビデオカメラで、携帯のカメラで撮影しまくっている。
しかし私にはA寝台個室の寝台券がある!ちょうど一ヶ月前の朝7時半に駅に行って寝台券ゲットを依頼して、10時の発売開始と同時に入手したものである。私は「出雲」には乗ったことがない(寝台電車の「サンライズ出雲」はある)ので、これが最初にして最後の「出雲」乗車である。本当はB寝台で良かったんだけど、「出雲」にはB個室寝台が連結されていないのでやむを得ず高いA寝台で行く(^_^;)。A寝台車オロネ25に乗るのは「はやぶさ」以来2回目だが、相変わらずボロイ。これが子供の頃憧れたオロネ25の本当の姿とは、少々残念ではある。室内は広いと言えば広いが細長いのでそれほど居心地が良いわけではない。
弁当やビール、お茶などを大量に買い込んで乗り込む。車内販売が来るとは最初から想定していないので、発車前の準備はもはや慣れっこだ。後で、連結されている食堂車(営業はしていない)で朝だけ弁当を売る事を知ったが、買いに行くのマンドクセ。A寝台車は1号車で、食堂車は5号車だし。マニアどもの羨望の?眼差しを浴びながら出発、即座にビールを開けて飲むわ飲むわ。たちまち2本を空にする。
東京発は21時なので、しばらくしてもう「お休み放送」に入り翌朝7時の香住駅到着まで静かだ。熱海まで夜景を堪能した後、サッサと寝る。

さようなら「出雲」

朝7時頃、香住駅到着前に車内放送にたたき起こされる。天気は相変わらず悪く、後で雪も降ってきた。この香住を出発した直後に大イベントがあるので、ここで起きなければならない。7時9分ごろにあの「余部鉄橋」を渡るのである。「出雲」で渡る、最初で最後の余部鉄橋。非常に残念ながら個室の窓は山側に向いており、海側の景色を見るためには部屋の外にでないといけないが、A個室は鉄どもで始発から満室であり、あまり顔を合わせたくないので(^_^;)山側の景色を堪能。すると、渡った先(餘部駅の側)の山の斜面に、鉄道マニアどもがビッシリ鈴なりになって写真を撮っているのが見えた!うっへえ!!この朝早くから三脚立ててご苦労なこった。
昔は優等列車(特急、急行)の中でも特別な存在だった寝台特急もいまや朝ラッシュ時の邪魔者、昼間の特急列車ダイヤを乱すお荷物である。「出雲」も邪険に扱われ、特急なのに鳥取では9分、米子ではなんと22分も長時間停車。まるで昔の長距離鈍行列車のようだ。まあ、そのおかげで我々マニアどもは駅でゆっくりと写真が撮れる\(^o^)/ 鳥取では雪まで降って天気は悪かったが、米子では幸いにも晴れ間まで出てきた。
しかるに!米子駅の駅員どもは「出雲」の周囲をぐるりと囲んで撮影者を厳重に警戒、ホームの白線を少しでも踏み越えたら笛や拡声器で注意を飛ばしやがる。これにはさすがに頭にきて文句の一つでも言ってやりたかったが我慢した。確かに、駅におけるマニアどもの悪行は目に余る。しかし、米子の駅員どもも過剰反応に過ぎる。今日は平日だからまだ数が少ないが、この調子で廃止日が近づくと激増するマニアどもとの間で摩擦が大きくなりそうだ。これから「出雲」を撮影しに行く人は気を付けたほうが良い。米子では先頭の機関車にマニアも一般者も一切近づけさせないようにしていたが、鳥取や終点の出雲市ではそのような規制は全く無かった。他の駅と比べても米子の異常さは突出していた。
そしてついに「出雲」は終点の出雲市に到着。10時54分、長い旅だったがあっという間だった。年々このような楽しい寝台車の旅のチャンスが減っていくのは残念。しかし、昨今の情勢を見るともはや寝台列車は使命を果たし、存在意義を失っていると思わざるを得ない。「出雲」が消え去るのは悲しいがやむを得ない。
出雲市では回送列車となった「出雲」の編成が出発するまで、鉄道マニアどもが入れ替わり立ち代わり先頭の機関車を撮影していた。自分の分を撮ったら速やかに他のマニアが撮影するために場所を譲る。マニアは本来、ほっといてもこれくらいの自律的な動きは出来るものだ。もっとも今日は比較的数が少ないからうまく行くのかもしれんが。

島根で人の親切を知る

出雲市に着いたら…次にやることはやっぱり一畑電鉄かな。出雲市駅はJR・一畑ともに高架化しており、以前来た時とは全く景色が変わっていた。一畑の電車も京王と南海の中古車で一新され、随分立派になった。なにせ以前乗ったときは電車の客室ドアが手動ドアで、車掌が手で開閉していたからな。
ところがここで大失敗。電鉄出雲市から乗った電車を川跡で乗り換えて出雲大社前に行く途中で、なんと大事なカメラを車内に置き忘れてしまったあああああああ!!!!!!無くしたのはサブカメラのLUMIXのほうだが、デカイ一眼レフはあまりにも重いのでこいつだけ持ってきていたのだ。しかしLUMIXはあまりにも小さくて軽いので、つい座席に置いてきたのに気づかなかった!!!!!orz
とりあえず出雲大社前まで乗って、駅員に連絡。本来ならいったん川跡に戻って硬券入場券を買い、一時間待って次の列車で松江に向かう予定だったが、カメラを忘れた電車が松江に着いて、忘れ物として届けられていたら早く回収したいので先を急ぐ。そのために…川跡までタクシーで先回り!A寝台といい、昔とは大違いの金使いまくりである。しかし電車なら340円のところをタクシーで2700円も使ってしまったのはさすがにアホだと思った(^_^;)。ここまでする必要は無かったかとちょっと後悔。
出雲市、大社前、川跡と硬券入場券を買いつつもカメラの事が気が気でないまま、松江しんじ湖温泉ゆきの電車に乗る。せっかくのローカル電車の旅も心ここにあらず。ただひたすら、カメラ届けてあってくれ!と願う。LUMIX本体もさることながら、それで写した「出雲」の写真が根こそぎ失われるのが辛い。
そして終点、松江しんじ湖温泉駅到着。恐る恐る駅員に尋ねる。カメラ忘れたんですけど…「これですか?」ああああああああああああああああああああああああああああったー!!\(^o^)/ありがとう島根の人。素晴らしいわぁ。

バスの旅もエエで

松江しんじ湖温泉からは、ここが始発となる広島行きの高速バスに乗車。松江市内と広島市内しか止まらないノンストップ便と、途中駅に次々止まっていく特急便とあったが私は後者に乗った。JR松江駅前でお客を拾って、バスは「山陰自動車道」と名乗る高速道路に上がるが…これがまた、腰が抜けるほどしょぼい高速道路で(^_^;)。対面通行なのは当たり前、くねくね急カーブだしアップダウンは激しいし開通区間が短くて車がほとんど走ってないし。併走する道路は2本もあってそちらの方が車が多いし。まだイラネエだろこんなローカル高速道路。
途中から松江道なる高速道路に入り、木次までが高速道路。そこからは一般国道54号を走っていくのだが、木次のバス停がまたわけのわかんない民家の前にあって、周囲には何も無くて腰が抜けそうだった。広島や松江のような主要都市に遠出するためのバス停がこんな辺鄙なところにある例を私は知らぬ。それ以外の三刀屋とか掛合、赤名といったバス停は国道上にあった。特に赤名は「JR赤名駅」とバス停なのに駅扱い。そこでやっと気がついた。嗚呼このバス路線はJRバス雲芸線の成れの果てなのか、と。
島根県から広島県に抜ける赤名峠では大雪に見舞われ、おおおおお3月なのにスゲエエエエと思ったが、三次市街地に入ったら雪もないし天気も良い。三次から再び高速に上がり、広島までの3時間半の長旅を堪能。

路面電車は時間がかかる

もういい加減に疲れたのだが、まだ日が高かったので広島電鉄に乗って宇品に行こうと思った。聞くところでは宇品港の改修工事により電鉄の宇品駅が移転したというので、せっかくなので乗っておこうと。ところが電車の行き先に「宇品」が無いので混乱した。しばらく観察していると、宇品電停は「広島港(宇品)」と案内されていることに気がついた。なんと、駅が移転したついでに駅名まで変わったのか。それにしても、路面電車は時間がかかる。まだ日が高いと思って乗った電車が終点の広島港に着いた時には日が暮れてしまっていた。去年の夏に鹿児島市電に乗ったときもそうだった。おかげで、新しい広島港駅がどんな感じなのかあまりわからないまま折り返す羽目になった。